3つの経営課題を解決するミッション・ビジョン・バリュー策定のポイント
MVV（ミッション・ビジョン・バリュー）は、企業の進むべき道を示す羅針盤です。これを策定・浸透させることで、「お金・人・将来」の課題を根本から解決に導きます。
① 「お金がない」問題 →【ミッションとビジョン】で解決
- 何をすべきか： 「社会における企業の存在意義（ミッション）」を明確にし、「事業の将来性（ビジョン）」を力強く語れるようにします。
- なぜ解決するか： 企業の魅力や将来性に共感する顧客・人材・投資家（資金）が集まりやすくなり、リソース不足の解消に繋がります。
② 「人が思い通りに動かない」問題 →【バリュー】で解決
- 何をすべきか： 目指す未来に向かうために「大切にすべき共通の価値観・行動指針」を定めます。
- なぜ解決するか： メンバー一人ひとりの判断基準が揃い、指示待ちではなく、自律的で一貫性のあるチームに変わります。
③ 「将来のビジョンが見えない」問題 →【ビジョン】で解決
- 何をすべきか： 組織が目指す「ワクワクする未来像・具体的な目標」を掲げます。
- なぜ解決するか： 進むべきゴールが明確になり、事業活動の全ての判断軸が定まります。
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会社の羅針盤「MVV」の作り方・使い方｜「お金・人・将来」の経営課題を解決する
「会社の向かう先が社員に伝わらない」「社員が指示待ちで自律的に動かない」「事業の将来像が描けない」…。 こうした根深い経営課題は、企業の存在意義と進むべき道を示す羅針盤、**MVV（ミッション・ビジョン・バリュー）**を策定し、組織全体に浸透させることで解決に導くことができます。
ここでは、単なる言葉の定義に留まらず、MVVがどのように経営課題を解決するのか、そして実際にどう作り、どう活用していくのかを具体的に解説します。
1. MVVとは？ミッション・ビジョン・バリューの役割
MVVは、企業活動の根幹をなす3つの要素で構成されます。これらは互いに連動し、企業の土台から未来までのストーリーを描き出します。
- ミッション（Mission）：果たすべき使命
- 「私たちは、社会において何を成し遂げるために存在するのか？」
- 企業の普遍的な存在意義であり、変わることのない「使命」です。なぜこの事業を行うのか、社会に対してどのような価値を提供したいのかを示します。ミッションは、日々の活動の拠り所となり、社員の誇りを醸成します。
- ビジョン（Vision）：目指すべき未来像
- 「ミッションを果たした結果、私たちはどのような世界を実現したいのか？」
- ミッションを遂行した先にある、組織が目指す具体的な未来の姿です。それは「業界No.1になる」といった定量的な目標かもしれませんし、「誰もが自分らしく働ける社会を創る」といった定性的な理想像かもしれません。ビジョンは、組織にエネルギーを与え、未来へのワクワク感を創出します。
- バリュー（Value）：共有すべき価値観・行動指針
- 「ビジョンを実現するために、私たちは何を大切にし、どう行動すべきか？」
- ミッション・ビジョンを達成する過程で、組織のメンバー全員が守るべき共通の価値観や行動の基準です。日々の業務における判断の拠り所となり、採用や評価の基準にもなります。バリューが浸透することで、組織に一体感が生まれます。
2. 【課題別】MVVが経営課題を解決するメカニズム
ご提示いただいた「お金・人・将来」の課題について、MVVがどのように機能するのかをさらに詳しく解説します。
① 「お金がない」問題 →【ミッションとビジョン】が共感と資金を呼ぶ
- 何をすべきか： 自社の事業が単なる金儲けではなく、**「社会にどのような良い影響を与えるのか（ミッション）」を明確に定義します。その上で、ミッションを達成した先に「どのような素晴らしい未来が待っているのか（ビジョン）」**を、誰もがイメージできる魅力的なストーリーとして語れるようにします。
- なぜ解決するのか： 現代の顧客や投資家は、製品の機能や価格だけでなく、企業の姿勢や社会的な意義を重視します。明確なミッションと魅力的なビジョンは、企業の「志」を伝えます。この志に共感した顧客は熱心なファンになり、優秀な人材は「この会社で働きたい」と惹きつけられ、投資家は「この会社の未来に投資したい」と判断します。結果として、事業を推進するための**リソース（資金、人材、評判）**が自然と集まる好循環が生まれるのです。
② 「人が育たない・動かない」問題 →【バリュー】が自律型組織を創る
- 何をすべきか： 「誠実であれ」「常に挑戦せよ」「まず、やってみる」といった、ビジョン達成のために**「大切にすべき共通の価値観・行動指針（バリュー）」**を具体的で分かりやすい言葉で定めます。重要なのは、経営陣だけで決めるのではなく、社員を巻き込んで策定することです。
- なぜ解決するのか： 明確なバリューが浸透すると、社員は「この場面ではどう判断・行動すべきか」を自分で考えられるようになります。上司の指示を待つのではなく、「バリューに沿っているか？」を判断基準に、自律的に行動できるようになるのです。これは、採用活動におけるミスマッチを防ぎ、人事評価において「何を頑張れば評価されるのか」を明確にする効果もあります。結果として、指示待ち集団から、一人ひとりがリーダーシップを発揮する自律分散型の強いチームへと変貌します。
③ 「将来が描けない」問題 →【ビジョン】が事業の判断軸となる
- 何をすべきか： 組織が目指す**「ワクワクする未来像・具体的な目標（ビジョン）」**を、全社員が共有できる言葉で掲げます。「5年後に業界トップシェアを獲得する」「私たちのサービスを通じて、100万人の働き方を変える」など、定性的・定量的の両面から設定することが有効です。
- なぜ解決するのか： 進むべきゴールが明確になることで、日々の業務が未来にどう繋がっているのかを全社員が理解できるようになります。「この新規事業はビジョン達成に貢献するか？」「この投資はビジョンに近づくために必要か？」といったように、全ての事業活動における明確な判断軸が生まれます。目先の利益や日々の忙しさに流されることなく、組織全体が同じゴールに向かって一貫性のある意思決定を続けられるようになります。
3. 実践！MVV策定の4ステップ
MVVは、以下のステップで全社を巻き込みながら策定を進めるのが効果的です。
- 【Step 1】経営陣による原体験の言語化 まずは経営陣や創業メンバーが集まり、「なぜこの事業を始めたのか」「どんな社会課題を解決したかったのか」「どんな時に最もやりがいを感じるか」といった、会社の根幹にある想いや原体験を徹底的に語り合い、書き出します。
- 【Step 2】社員参加型のワークショップ 各部署からメンバーを選出し、「私たちの会社の強みは？」「お客様に一番喜ばれることは？」「どんな会社になったらもっとワクワクするか？」といったテーマでワークショップを実施します。これにより、現場のリアルな声や価値観を吸い上げます。
- 【Step 3】MVV草案の作成とフィードバック Step1と2で集まった言葉のカケラを元に、経営陣が中心となってMVVの草案を作成します。草案は全社に共有し、「もっとこうした方がしっくりくる」「この言葉は分かりにくい」といったフィードバックを募り、磨き上げていきます。
- 【Step 4】MVVの決定と全社への発表 最終的なMVVが決定したら、全社総会などの場で経営者の口から、その言葉に込めた想いや背景ストーリーと共に発表します。単に言葉を発表するだけでなく、なぜこのMVVなのかを熱量を持って語ることが重要です。
4. 作って終わりにしない！MVVを組織に浸透させる5つの方法
MVVは「額縁に入れて飾っておくもの」ではありません。日々の活動に根付かせて初めて価値を発揮します。
- 採用活動への組み込み 採用基準に「バリューへの共感」を加え、面接で「あなたの価値観と当社のバリューはどこが合致しますか？」といった質問をします。
- 人事評価制度との連動 「バリューを体現した行動」を評価項目に設定します。例えば、「挑戦」というバリューがあれば、「失敗を恐れず新しい手法を試みたか」を評価します。
- 日々のコミュニケーションでの活用 1on1や会議の場で、上司が「そのアクションは、うちのバリューでいうとどれに当てはまる？」と問いかけ、MVVを意識する機会を日常的に作ります。
- 社内広報や表彰制度 社内報やイントラネットで、MVVを体現した社員やプロジェクトをストーリー仕立てで紹介したり、全社総会で表彰したりします。
- 経営者自らの発信 最も重要なのは、経営者がことあるごとにMVVに触れ、自身の意思決定がMVVに基づいていることを一貫して示し続けることです。